—咄嗟に出た言い訳—
古文の授業中、隣から机を叩かれて一枚の紙を渡された。先生に気づかれないように、前を見ながら手を伸ばして紙を受け取る。
その紙には、たくさんの絵が描かれていた。
しりとりの『り』から始まり、りんご、ゴマというふうに続いている。
そう、僕たちは絵しりとりをしている。一緒にやっているのは、隣の席の青木だけだが。
紙を見ると、青木の絵が下手で、何を描いているのか分からない。
(コレなんだよ)
先生の目を盗み、ジェスチャーで伝える。青木は『見れば分かるだろ』という目を向けてくる。
「そこ、授業中に何してるんだ」
先生の声が教室に響いた。
皆の視線が僕の元に集まる。先生はつかつかと近寄り、紙をとった。
「なんだこれ?」
「今日の授業の『竹取物語』を、絵で表現してみました」
流石に無理のある言い訳だな、と話しながら思った。
「このりんごとかゴマは……」
「かぐや姫が好きそうだなと思って、描いてみました」
先生は大きく何度か頷いた。
「なるほど、おもしろい。登場人物になりきって想像することは、作品を理解するために大切なことです。これからも励みなさい」
「はい!」
先生は黒板の方に戻って行った。
この先生はバカか、と心の中で呟いた。隣の青木は笑いを堪えるのに必死だった。
お題:君と紡ぐ物語
12/1/2025, 4:46:00 AM