7. 見えても灰色、されど7色はきっとある。
「虹が滲んでる」
こんなにも涼しいのはいつぶりだろうか。
ここ最近地球温暖化真っ盛りで飛んだ猛暑が続いていたのに
ここだけこんなに涼しくなるなんて、こいつは一体どんな魔法を使ったんだ。
「なんか言えよ」虹のはるか対極にいるような堕落に溺れたあなたに言われてももはやなんの言葉も出てこない。
当の本人は左手にアルコール缶、右手に煙草、そして煙を吐く生気のない顔、して、クズの観音堂みたいだなんて思った私を横目にベランダからアスファルトを見下してる。
人生終わってるなんで最悪の比喩文句をこいつほど着こなせるやつなんて他にいないだろう。ほら柵にも垂れて眠そうに項垂れてる。口を開けばどーでもいいことかあくびばっか。
あぁ、あと煙草吸っていい?って言ってるのはよく聞くけど
何回聞くんだってぐらい吸うくせに律儀に聞いてくるあたり
憎めない。ふと、lリビングの空き缶溜まったフロアテーブルが目に入る。エアコンが効いた部屋で空き缶ばっか冷やしてても意味がないだろと思うけど、こんな暑い中ニコチン不足のこいつについてベランダに出る私も私だ。「あー消えたわ」トーンから態度まで、実況される虹の身になって欲しい具合に気だるげで適当だ。けど、学生のくせしてこんなことしかしてない私の方がよっぽど人生終わってるのかもしれない。ほら、
アパートの前を通る同年代のカップルを視線でなぞって私も項垂れた。ふと煙草に手を伸ばすもまたこいつにかわされて、ため息を吐く。
「じゃあ、行きましょうか、」「え?どこ?」
隣であがった間抜けな声に
「海」と返して、こいつの続きを演じてやる。
「行かないと、虹の二次会」
思いの外ケラケラ笑うこいつを横目に軽蔑しながら
私はすっと煙草を1本奪う。
そんなこと気にもとめずに彼は言う。
「それって虹の終わりでやってんの?」
「じゃない?」任務を終えた私はそんなことどうでもいい
けどあまりにも無邪気にそんなこと聞いてくるもんだから
こっちまで変なテンションになってくる。やっぱ暑さかな
「じゃあさ、俺らはあえて逆行こうぜ」
なんでだよ。
7/28/2025, 1:10:06 PM