一夜の夢

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あなたと過ごした最後の夏は、暑くて、息が詰まって、うんざりするほど苦しかった。
最後まであなたは、わたしの目を見つめているフリをして、その先のどこか遠い場所を見ていた。
ねえ、わかっていたの。わたし。

二人の小さな家を出て、小さな壺だけ持って、それから、列車に乗って北に向かった。
寒くて冷たい北の海に、白く細かなあなたのカケラを撒いた。
海に背を向けて、ようやく泣いた。

わかっていた。
すぐ泣く女が嫌いなこと。
わかっていたの。
臆病でいたいこと。
だからわたし、ちゃんと隠せていたでしょう。

幸せだった。
そう言ったら、あなたがわたしから去っていくことも、よくわかっていた。

2/29/2024, 12:20:32 PM