人達はまだ小さかった私のことを、賢い、と表現した。
だから、私は賢くなった。気がつけば大人になっていた。大人、という肩書きのおかげか、辺りに聡明らしく振る舞うことが上手くなった。
ちしき人らしく、知っている一割のことを、まるで真理の五割みたく話して、誰かの憧憬を身に受けて、心を満たす。そんな、馬鹿なことばかりしている。
あぁ、私は、こうやって見栄ばかりに囚われ、死ぬるんだろうか。
人という像の一割しか知らなかった、あの、子供のまま、世界がまだ小さかった子供の頃そのままで、大人になりたかった。
賢い、という安易に発せられる四音を信じる行為こそ、愚かであると、知ればよかった。
私の知っていた一割の人間は、いつも笑っていて、一緒に楽しんでくれる。子供のような大人の姿だった。
5/12/2024, 10:24:32 AM