華音

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些細なことでも

豪華に彩られた部屋に1人。鏡に映る私を見る。
宝石で周りを飾られ、黄金色に縁どられた鏡が部屋全体を映す。
私は、その鏡の真ん中に入る。豪華に着飾った服達が、私を目立たせる。
シルバーに輝くティアラには、よく見ると一つ一つに小さな宝石が埋まっている。ティアラの横から頭の後ろあたりを覆う花嫁のような白いベールがかかっている。ドレスも、今回のためにわざわざ用意してもらった。
今回のドレスは、濃い青を基調としたデザインにしてもらった。
胸元に白い薔薇の刺繍が施され、横に同じ色のフリルが付いている。上半身は体のラインに合わせて、スタイルよく見せているが、下半身の裾にあたるところはAラインとなっていて、豪華、なおかつ可憐に見せている。袖の部分は長くなっていて、肘あたりまで伸びている。裾はふわりと広がり、白い月と色とりどりの薔薇が散りばめられている。露出は少ないが、その分絢爛さを見せつけている。
そして、ドレスと同じ、青いパンプス。手には白いレースの手袋。
ヘアスタイルはハーフアップで、三つ編みをしている。中心に飾られた赤いバラがベール越しに見える。
今日のイアリングは、せっかくバラをモチーフにしているのだし、お花のにしようかしら。
いいえ、あなたから頂いたものにしましょう。
私は、凝ったデザインをした美しい箱を開け、深紅の薔薇のイアリングを取り出す。
いつか、貴方が誓ってくれたもの。
迎えにいく。その時が来たら。
今回のパーティには、あなたも参加する。
あなたに、もっと夢中になって欲しいの。
私が美しく着飾るのは、決して自慢するためじゃない。
私が好きだと思う服を着ている私を、もっと見てほしいから。
貴方は、鋭い感性を持ち合わせているお方。少しでも変化があると、すぐに気が付いてくれる優しいお方。
だから、と私はベールと長く艷めく髪の中にイアリングを通した。きっと、あなたなら気がついてくれるはず。
あらやだ、いけない。指輪もしなくちゃ。
行く前に、もう1度メイク直しもしてもらわなくちゃ。
アイシャドウも、もう少し色を薄くしましょう。
口紅は、もっと色をオレンジっぽくして……小さな事でも、貴方は気が付いてくれる。
それに、社交界ということもあるから、些細なことも気にしなきゃいけない。
でも、あなたの為なら、不思議と嫌な気持ちはしない。
高鳴る鼓動を抑え込むように、私はメイドを呼んだ。

9/4/2023, 11:19:40 AM