ついていくか、いくまいか、ただそれだけである。
差し出された手を取れば山も海も何もかもを超えていく。二人でやるんだと決意するのは後からでもできるだろうし、今はただ歩くだけで良い。
断れば。後ろを向き、背に問う声が頭へ入らないよう首を振りつつ駆け出すしかない。どうして、なぜ、薄情者、などにこたえる余裕などあろうはずもないから。駆け出さねば、声どころか腕に捕まって答えに窮するだろう。
地獄だと言う。目の前の男の子は地獄になった故郷を見て復讐を誓うのだと言う。やはりそれには応えられず。
失ったものに報いもせず因縁を辿る覚悟もない。さりとて一人静かに死ぬよりは昼も夜もなく歩くほうがマシだと、それだけを理由に手を取った。
滲むほど暖かい肉を想って、それを生きる理由にと決めた。
6/9/2023, 9:24:08 AM