iro

Open App

ふっ、と消えてしまった。昨日まで隣にいたその姿は、振り返ってももういない。

あっ、と声を上げた。何かを思いついた君は、いとも簡単にこの世を去った。

小さな石ころをたくさん集めて、ぽっけに詰め込む君だった。
手のひらが傷つくのも構わずに。
ぽっけが破けるのも気付かずに。

大きな荷物を一人で抱えて歩き続けるような真面目さだった。
疲れたら少し休んで、重すぎる荷物は捨て置いて。
あの日、君の手をずっとずっと握っていてあげればよかった。

辛かっただろう。苦しかっただろう。

まだ夢を見ているみたいだよ。
名前を呼べばいつもみたいに、二階から降りてくる足音がして、まだ眠たげな君が顔を出して。
それからおはようと、優しい声が聞こえてくるはずなのに。

今はその影も、その声も。
君の可愛い笑顔もぬくもりも。

遠く遠く 空の果て


『遠く….』

2/9/2025, 10:00:14 AM