Open App

「なあ、あれってなんだっけ」
「あれじゃ分かんないですね」

今年初めての30度超え。
本格的な暑さはまだまだこれからなのに。
じわじわと肌にはりつく湿度に早くも冬が来ないかとつい八つ当たりのような声が出た。
「ほら、あれ」
つい、と長い指が指し示す先にはグラウンドで走る姿。
「あー…今度体育祭なんで。その練習ですね」
「ご苦労なこった」
両足を投げ出し、後ろ手をついて。そんな思ってもいないようなことを遠くから眺めて言ったって。
汗掻くことも、がむしゃらになることも。そういうのは自分には合わない、向かないなんて思っていたのに。

「走る時にさ、『天国と地獄』が流れると盛り上がるよなー」
「それはあなただけでしょ」

そっか、とからから笑う姿すら眩しくて。
早く冬にはなって欲しいのに。
こういう時間は止まって欲しいなんて。

5/27/2024, 1:48:11 PM