菜な子

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俺が死んだら、俺のことは忘れろ。

そう言っていたくせに、彼は私に口付けをして
出掛けてしまった。

馬鹿だなぁ。
馬鹿だけど、そこが愛おしい。
そこが大好きだ。

戦いたくないと言いながら
戦場へ出掛けてゆく彼。

たまたま咲いていたと言って持ってきた彼の花は、
花屋でしか見たことない。

いつだって何だか言動と行動があべこべな彼。

俺、今回死ぬかもしれねぇ。
そんな事言いながら、
結局、無傷とは行かずとも毎回帰ってきてくれた彼。


今回だって 、そういう風にあべこべなだけでしょう。
忘れろだなんて言いながら口付けする馬鹿者なんて、
私忘れられない。
ううん。馬鹿者じゃない。
あなたが忘れられない。
あなただから忘れられない。

おかえりなさいって、もう一度、いや
何度でもあなたに言わせて。
おかえりなさいの
キスをさせて。

ただいまって、もう一度、いや、
何度でも私に言って。
ただいまの
キスをして。

唇から、あなたの体温を感じさせて。
だから、まだ体温を無くさないで。







「Kiss」

2/4/2023, 1:37:23 PM