白糸馨月

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お題『月に願いを』

『月に向かってなにかを唱えれば、美しさが手に入る』

 そんなおまじないがあったことを思い出す。その頃、私は小学生で鼻息を荒くして語る友達に「そんなわけないじゃん」と笑いながら返したっけ。
 そんな私も大学生になり、今、窓辺に立っている。
 今日、好きな人が好きなタイプについて語ってた。彼の好きな顔は、私の顔の特徴とか服装の好みとは正反対のものだった。
 流行りのメイク動画でやったメイクを自分のものにして、髪を巻いてツインテールにして、かわいい服を着ても彼には意味がなかったのだ。
 私は自分の好きな格好で好かれたかったけど、彼に好かれるためにはもう少し背が高くて、涼しい顔をして、中性的な見た目である必要があるらしい。
 ファッションは変えられるが、背の高さとか顔立ちはどうやっても変えられない。
 私は昔、友達に教えられたおまじないを呟く。
 つぶやいた所できっとなにも変わらないけど、私は何度もそれを呟く。今だけは、願い事をすれば彼好みの女の子になれるんじゃないかって気がしたんだ。

5/26/2024, 11:36:28 PM