『誰にも言えない秘密』
「ただいまー」
暗いアパートの自室に向かって一言。
「あ、帰ってきた」
幼い声がかえってくる。
部屋にある押し入れから、小学生男子が出てきた。
「ほんっと。端から見たらこれ誘拐だぞ」
「そうだね。ところで、晩ご飯に焼きそばある?」
「おーあるある」
買ってきたカップ焼きそばを見せると、ヒカルは満足そうに笑った。
俺はビニル袋から、サンドイッチを取り出し食べはじめる。
「あ、そうそう!今日はあそこだよ、ほら原木さん家近くの公園のさ、ちょっと草とか多く生えてるとこ。」
「あー、マジか。まだ良いカメラ買えてねぇんだけど。勿体ねぇ」
楽しそうに焼きそばを作るヒカルが言う。
本当に勿体ねぇな。折角の機会なのに。ここで嘆いていても仕方ない。見つかる前に撮りに行くか。
サンドイッチを一気に食べ、カメラを手に再び出かける。
「あー原木さん、原木さん、…お!あった」
原木さん家近くの公園。まだ、騒ぎになっていない。ということはまだ見つかってない。草の多く生えた場所、そこに目当ての者はあった。
「玉田カヨ…カヨ…カヨちゃんか」
草の中に転がって動かない少女の名前。まだ小学生なのになぁ。可哀想に。
安心しな。カヨちゃん、君の死は決して無駄じゃなかったよ。
カシャッ。カシャッ。何枚かカヨちゃんの写真を撮りその場を離れる。明日にはきっと見つけてもらえるよ。
「ただいまー」
「どう?上手く撮れた?」
「ん、バッチリ」
返事を適当に返し、撮ったばかりの写真のデータをパソコンに移す。そこから写真をプリントし、プリントした写真を壁に貼る。
「わぁ、最初の頃より撮るの上手くなったね。」
「だろ?今の俺だぶん生きてる奴より、死んだ奴の方が上手く撮れる自信がある。」
「うわぁーサイアクな特技だ」
「人殺しに言われたくねぇよ」
俺は殺人犯の少年を匿っている。そして、その少年ご殺した奴の写真を集めている。これが俺の誰にも言えねぇ秘密。
6/5/2023, 2:59:10 PM