柊リテラ

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1. special day

今日は、特別な日だ。
僕が愛して止まないひとが生まれた日。
貴方は老いを感じる日だから祝わないでほしいと言うけれど、僕にとっては愛しい貴方がこの世に誕生した日なのだ。どうして祝わずにいられようか。
僕は貴方を愛しても愛しても足りないと思うのだ。減るものではないのだから、存分に貴方を祝わせてほしい。
あと、願わくば僕に甘えてわがままをぶつけてほしい。どんな無理難題でも僕は叶えたいと思ってしまう。他でもない貴方の願いだから。
貴方は何を願うだろうか。
貴方は美味しいものを食べている時に幸福を感じると言っていた。高価なものから安価なものまで貴方はなんでも好んでいた。となれば願いは美味しいものが食べたいだろうか?そうであれば僕が腕をふるって貴方を満足させよう。もし僕に作れないものを願うならば、買いに走ろう。どんなに遠くても構わないさ。
貴方は歴史的建造物や、大自然が形作る景色を眺めるのが趣味だと言っていた。やはり旅行がしたいだろうか?ならば僕が貴方を連れて何処までも行こう。素晴らしい景色を見て、何物にも代えがたい思い出をたくさん作ろう。貴方が満足するまで、何処にだって行くさ。
僕は貴方のためならば、なんだってできるんだ。無論、この身を差し出すことだって厭わない。貴方の生きる糧になれるのならば、僕は本望だ。
だから。だから、どうか目を開けてほしい。そのすっかり隠してしまった、眩い輝きを放つ宝石のような双眸に僕を映して笑ってほしい。ただそれだけでいい。僕には貴方しかいないんだ。

真っ白な病室の、窓際に赤いバラの花束。カッチリとしたスーツに身を包んだ青年が今日も眠れる病人に話しかける。時折涙を流しながら、日に日にやせ細っていくベッド上の住人の手を握る。明日にはきっと自身の願いが実現するという希望を持って。

7/18/2025, 5:05:26 PM