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次の駅だ。今日から高校生生活が始まる。もう中学生の頃のズボラな自分とはもうおさらばだ!“ルール”!課題の期限は守る!授業中は寝ない!忘れ物をしない!あとは、、、遅刻をしない!みんなにとっては当たり前で簡単なことかもしれないけれど、私にとっては難しいことなのだ。
電車の窓を流れる景色を眺めながら、“ルール”を頭の中で何度も何度も唱えて自分の脳みそに言い聞かせる。この“ルール”を破ったら一週間テレビ禁止の刑だ。自分になにかしらの刑罰を与えないと中々ズボラ脱却はできないのではと思い自分の中の一番嫌な罰を考えた。
テレビが一週間見れなくなると結構困る。大好きな俳優が出演している月曜日の連ドラを逃すことになるし、朝七時からの情報番組の占いも見れない、景品が当たるじゃんけんも参加出来なくなる。そんな仕打ちは絶対にごめんだ!至福の時間は絶対に死守する!もう一度自分の心の中でけじめをつける。
どうせ“ルール”を破ったとしても、ズボラだからテレビも見ちゃうんじゃないかって思ってる?そんなことが出来ないように、
「私がこの“ルール”を破ったらテレビの線は一週間抜いていいから」
とパパとママに一週間耳にタコができるくらいに宣言している。
元々私の家にはテレビがなかった。私が中学生になる頃にパパとママに私がおねだりして入学祝いで買ってもらったのだ。うちは新聞をとってるからテレビなんて高級品はいらないのに。なんてママ最後までブツブツ言っていたけど。
私の生活からテレビが消えることなんて考えられないのだ。私は今日から新しい自分に生まれ変わる。ずっと頭の中で“ルール”を唱えてるうちに目を閉じた。









「次は、終点██駅██駅です。お忘れ物のないようにお降り下さい。」
車内アナウンスで目を覚ました。すぐに時間を確認する。腕時計の針は九時を指していた。そして始業式は九時からだ。





私は一週間どう生きていこう。

8/10/2023, 3:58:50 PM