『鳥かご』
「暑い、、、」
金曜日。
なんとか定時で終わって、夏目の家で呑もうと最寄りの駅に降り立った。
昼間の太陽で熱せられたアスファルトやらのせいで夜になろうとしている時間でも暑い。
「雪村さん、スーパーでいろいろ買って帰りましょう。明日は休みだし、のんびりしましょうよ、ね?」
「そうだな」
外だから、名前の名字呼び、語尾のですます調。
徹底している。
だから、完全プライベートの時の「さん」付けではあるが、名前呼びとタメ語が未だになかなか慣れない。
ま、そういう俺も完全プライベートでしか、夏目の名前を呼ばない。
夏目の口が『悠人さん』とつむぐ時の少しハスキーな声。
同時に熱を孕んだ黒い瞳にすぐ心臓が跳ねそうになる。
駅と夏目の家の中間辺りにあるスーパーで夕食と酒類の調達をして、夏目の家に帰り着いた。
「悠人さん、先にシャワー浴びちゃってね」
「ん、了解」
腹も減っているので、早く食事にありつきたくて、急いでシャワーを浴びた。
リビングに戻ると、夏目が料理などを並べ終わったところだった。
短時間の間にエアコンも効いている。
「あ、エアコン、気持ちいいな」
「あれ?悠人さん、もうシャワー終わったの?」
「うん、腹減ってるし、司も早くシャワーしたいだろ?」
「じゃあ、急いでシャワーしてくるね。先にビール飲んでてもいいよ?」
「いや、待ってる」
俺の返事に気をよくしたのか、夏目は嬉しそうに目を細めた。
「ふふふ、、、。悠人さん、もーかわいい。このまま閉じ込めておきたい」
次の瞬間、掠めるように軽いリップ音がした。
「じゃ、シャワーしてくるね」
そう言って、夏目はリビングを出て行った。
「不意打ちだ、、、」
7/26/2024, 5:20:10 AM