懐炉 @_attakairo

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君にねだって、あたえてもらった小鳥がしんだ。

すこしねて起きたら、鳥かごのなかで動かなくなっていたんだ。
水やたべものはあたえていたし、かごのなかでは飛べないまでも、ほそい足であるいていたのに。
 まえから弱っていたのかな。
 わからない。
すきまから指をさしいれても、とどかないので、体温をたしかめることもできない。
 でもきっと、しんでいる。
 檻から開放していたら、長生きしたのだろうか。
 わからない。わからない。
涙をこぼして数分後、君がやってきた。
おどるように、かろやかに。膝丈のスカートをまわして。
くるり、パタンと、とびらが閉まる。そして、壁と見分けがつかなくなった。受取口とおなじく。
「泣いているの?」
君はあの小鳥のように、首をかしげる。かごをみせると「あら。ざんねんね……」
「でも泣くことないわ、すぐに次のおともだちを入れてあげるから」
きょうの午後には用意ができる、なんて君がいう。そこで、いまは午前だとしったけれど、そんなことはどうでもよかった。
 そうじゃない、と僕はいった。
 あたらしいともだちが欲しいんじゃない。
 ただ、この鳥が飛ぶところをみたかった。
 空はないし、まどもないけれど、はばたくところを目撃したかった。一度だけでも。
「鳥かごを開けてあげなかったの?」
君がおどろいた顔をする。
「その子をあげたときに、鍵もいっしょに渡したでしょう?」

 ……そんなわけない。もらってない。絶対に。
ひっしに訴える僕を、君はじっとみていた。しだいに、こうなるまでずっと、なにも言わなかった僕が悪いように思えてきて、やっぱりそうだと思って、口をつぐむ。
籠を与えられたときだって、錠の鍵穴には目もくれず、さびしさを紛らわす存在として見ていたくせに。
 僕はこの子のことを、何も考えていなかった。
 せめて、僕自身の手で弔ってやりたい。
 せめて、その小さな身体を、両の手で包んでやりたい。
途切れとぎれの、拙い要望だったけれど、君は最後まで聞いてくれた。ひとつ溜息をつくと。「残念ね」
「少し前のあなたなら、泣く理由も隠していたはずよ」
一歩、また一歩、近づいてくる。
「成長するのって本当に早いわね。今、こうして話している間にも……」
意地悪をしてごめんなさい。あなたの言う通り、鍵は私が持っていたの。
「解放してあげる」
そこで君は来てからずっと、後ろに組んでいた両手を解いた。僕は錠の位置を確認し、鳥籠を差し出す。スカートがふわり、揺れ、






「パパ。わたしよ」
「じつは、かわいがっていた子がしんじゃったの。とってもかなしくて……」
「ほんとう?すぐに? ありがとうパパ、だいすきよ」
「それと、おねがいがあるの」
「つぎのおへやには鍵付きのとびらと、まどがほしいわ」

【君が隠した鍵】

11/24/2025, 12:50:31 PM