葉月

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「いつまでも捨てられないもの」

 いつまでも捨てられないもの、それは経験である。または記憶かもしれない。捨てられないもの、であるなら、それは「物」であるはずだけれど、私は昭和の生まれなので、戦後の昭和の時代に積み重なった何物かが、いまも心の奥深くにあって捨てられないでいる。それは何かと言うと、認知バイアスである。
 私自身、高度経済成長期のあの何とも言えない高揚感のなかで成長してきた。インフレ経済は永遠に続くものだと信じていたし、バブル崩壊して尚、また元どうりの経済発展を夢みていた時期もあった。
 いつからだろう。精神崩壊しそうなほどの苦しみから私を救ってくれたのは仏教の「般若心経」であった。そして『方丈記』の鴨長明であった。彼の生き様は私の心の支えとなった。そうした学びの中から、繁栄というものが永遠ではなく歴史的に考えても、その後にやって来るのが衰退期である事を知った。『方丈記』に記されたような時代がやって来るかどうかは、わからないけれど、いまはAIでシュミレーションが可能で正しいデータがあれば未来も見える。
 例えば2025年問題は、以前から複数の問題提起がされていた。それは予測可能なものばかりで、昨年あたりから日本社会は、真剣に賢明なる人達の言葉に耳を傾けるようになった。しかし差し迫った状況から始めるのでは、やはり遅い。
 ともすれば、悪い予測は後回しになる。当然のことかもしれない。日本に限らず、いま世界は多くの問題を抱えている。その中でも特に温暖化に関しては、どうしても楽観的にはなれない。『方丈記』は短いお話なので、興味がある方はぜひ読んでみて下さい。こうした歴史的事実をどう受け止めるかで、貴方の心にも変化が生まれるかもしれません。




8/17/2023, 11:08:58 AM