いぐあな

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300字小説

胡蝶の夢

 俺が小学生のガキだった頃。田舎のじいさんの家に泊まりに行った。ちょうど春の盛りで、俺は毎日のように虫取りをして遊んでいた。
 その日は畑の上のモンシロチョウを捕まえようとしていた。虫籠を下げ、虫取り網でひらひらと舞う蝶を追っていた。蝶はすいすいと網を避け、いつの間にか畑から小道に、小道から古い大きな屋敷の庭へと入って行った。
 綺麗に整えられた庭には、縁側に面して座敷があり、奥に布団を敷いて若い男が眠っていた。蝶が顔にとまり、男はむくりと起き上がった。病人特有の痩せた青白い顔で男は、庭に入ってきた俺を見て、にこりと笑った。
「しつこく追い回すなんて酷いな」

 俺は悲鳴を上げて逃げ、以来、蝶は見るのも苦手だ。

お題「モンシロチョウ」

5/10/2024, 11:49:25 AM