我が家には愛犬のチワワちゃんがいる。
もうすぐ7歳。人間に換算すると44歳。
という立派なおばさんだって知った時には信じられなかった。否、今も信じていない。
愛犬は、身体を撫でられるのが大好き。
「ただいま」って私が玄関を開けると、私の膝に両足を乗せてシッポを緩やかに振って出迎えてくれる。
愛犬を立たせたまま、私は腰を屈めて彼女の首筋や背中を撫でる。撫でる。撫で摩る。
もうそろそろ良いかと手を離すと、撫でていた右手に身体をくっつけてくる。
言葉を話さないのに、『撫でて』という要求だとわかる。
今撫でていたところが、撫でられて気持ちの良い場所だということも。
撫でる、撫でる、撫で摩る。
手を離すと、まだ、と私の右手に身体をくっつける。
玄関から靴も脱げずに撫で続けたけどキリがない。
「このまま散歩に行くよ」と首輪に紐を繋げたら理解して、玄関扉へとダッシュした。
『散歩行きたい』シッポがブンブン揺れている。
「外、寒いよ」
玄関を開けたら雪が舞っている。と言うか、吹雪いている。
さっきまで降ってなかったのに。すんごい寒い。ゲキ寒。
愛犬は、どちらかと言えば紐を引っ張って前へ前へ急ぐタイプではない。
飼い主の隣で、時折チラチラと飼い主を見ながら、飼い主と同じペースで歩くのが常だ。
それが今日、我先にと走る。
「寒い〜〜、でも平気なんだね。走るの珍しいね」
あれっ!?
珍しいと思った瞬間、愛犬は玄関へと猛ダッシュで帰宅。
玄関扉を早く開けろとドアノブ辺りを見つめている。
『寒いさむいさむい』『無理むりムリ』ってココロの声が聞こえた気がして、私は爆笑した。
「寒かったかー!寒いよねー!」
扉を開けると愛犬はすぐに身体を滑り込ませた。
愛犬は喋らない。
でも、何を要求しているのか、よくわかる。
彼女のココロは単純で愛おしい。
だから私は笑って今日も彼女の要求に従うのだ。
撫でてなでてと、
足をかけ、右手にくっつき、お尻をくっつけて、お腹を差し出す。
遊ぼうよと、
おもちゃを咥えてやってくる。
ご飯の時間だよ、おやつの時間だよ、とクンクン鳴く。
10分のズレもない正確な腹時計に舌を巻く。
日本語を喋るわけでも、ジェスチャーをするわけでもない。
でも愛犬のココロは他の誰よりも理解できる。
そして単純で愛おしい彼女のココロを、
今日も今日とて愛しむ私に、
愛犬は楽しそうに笑ってくれた。
ココロ
2/11/2025, 12:16:55 PM