ここから離れた校庭で立って友達と談笑している彼女を
僕はただ、ただ見つめていた。
『憧れ』とでもいうべきか。
僕は彼女の才能にいつも嫉妬する感じている。
『恥ずかしい』とでもいうべきか。
しかし、僕は彼女を遠くから見つめるだけで
「おはよう」すら言えない。
彼女を好きだと肯定しているけど、
彼女と何かしらの関係を持ちたいとは否定する。
関係を持ってしまったら彼女と何か事故が起きた時、
僕は対処できない。
それを恐れて今日も彼女を見つめてる。
だが、今日はそれを破られる日だった。
彼女にバレないように見つめている最中、
刹那に彼女と目が合った上、彼女が口角を上げたのだ。
そして、彼女は友達に手刀を切り、こっちに向かってくる。
(今までのことがバレたのか?)
戸惑い目が泳ぐ僕の前に立って彼女は
さっきよりもわかりやすい笑顔でこう言った。
「あなた、いつも本読んでるよね?
私も小説が好きなんだ。誰が好きなの?」
僕は突然のことで僕はここから逃げてしまおうと思った。
こんなチャンス一度でもあるかないかわからないのに。
「ぼ、僕は太宰治が好き、です」
二重のキリッとした目を大きく見開き彼女は言った。
「奇遇だね!私も好きだよ、太宰」
それからのことはよく覚えてないけど、
関係を持つことにためらっていた自分を少し悔やんだ。
話を聞くと彼女には年上の彼氏がいた。
それと僕は関係ないかもしれないけど、
意志の弱い自分を心の中で蹴った。
4/29/2026, 4:41:42 AM