崩壊するまで設定足し算

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▶40.「仲間」
39.「手を繋いで」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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冬に祈る祭りの翌日。

「世話になったよ」
「ああ、気をつけて」
戦時中に使われていた施設が残っていると噂を聞いた人形は村を出た。
辺境から出ると見せかけて数日かけて迂回し山に向かう。

東の辺境は、その大半が山々で占められた山岳地帯だ。
人々は、その裾に沿ってまばらに村をつくり細々と暮らしている。

(山中にも村があるのだろうか)

(念の為、山に入る前に様子を見た方がいいだろうか)

未知の領域を前に人形は歩きながら思案を重ねていた。
時折強く風が吹くので、外套を手で抑えなければならない。

‪✕‬‪✕‬‪✕‬は、手を繋いで祈りを捧げていた村のことを思った。

手を繋ぐことで肌が触れ合えば、
親しみが生まれ村内の団結が強まる。

しっかり食事から栄養をとれれば、
厳しい寒さにも耐えられるようになるだろう。

同じ対象に祈りを捧げることは、
思想の統一に繋がる。

多少排他的な態度も、
歴史的経緯もあるだろうが、
新参者による余計な不和や軋轢を避ける結果になっている。

この土地を生き抜き、
仲間同士支え合う。
そのための知恵。


博士によって作られた
この世にたった一体だけの
人間のフリをしているだけの人形

‪✕‬‪✕‬‪✕‬には祈りも仲間も無ければ、
欲しいと思ったことも無い。

12/11/2024, 9:23:49 AM