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手紙の行方 と あなたは誰 です

手紙の行方

「キミのことが大好きです」
スマホという便利なものを持っているのに、僕は今、手紙を書いている。
というのも、小さい頃から仲良くしていた幼なじみ。
キミが遠くへ引っ越したとき、まだ僕たちはスマホを持っておらず、知っているのは親が聞いた引っ越し先の住所だけ。いつも一緒だったキミがいないことが淋しくて、キミがどうしているか気になって、手紙を出した。そのことがきっかけになり、スマホを持っている今でも、手紙でやり取りをするのが習慣になっていた。
「何してるの?」
手紙を書いていると、家事を終えたのか、エプロン姿のキミがコップを持って現れる。
「キミに手紙を書いていたんだ」
コーヒーの入ったコップを受け取り微笑むと
「え?私?」
キミは目をパチクリさせる。
「手紙をやり取りしてたのが懐かしくてね。書いてみたんだよ」
書き終えた手紙を渡すと
「ありがとう」
キミは目を細め、手紙をエプロンのポケットにしまった。
「また、宝物が増えたわ」
うれしそうに笑うキミに
「これからも増やしていこうね」
僕も笑みがこぼれた。
僕たちがやり取りしていた手紙の行方。
それはもちろん、ここにある。
結婚して、一緒に住むときに持って来た、僕たちの宝物。
ずっとずっと大切にしようと、僕は思うのだった。


あなたは誰

「あ、まただ」
夢から覚めるといつも思う。
夢で見る、あなたは誰なんだろうと。
私の名前を呼びながら、私に向かって手を伸ばす。
そして私も、知らないはずの彼の名前を呼び、伸ばされた手をつかむ。
「知ってる人?…いや、でも…」
彼の正体はわからない。
けれどいつか、彼に会える。そんな気がしていて、いつ会えるのか、その日が来るのが楽しみで仕方ない。
「よし、起きよう」
その日を楽しみに、私は今日も頑張るのだった。

2/20/2025, 8:41:10 AM