おや、放課後…。
この前そのシチュエーションは書いてしまった。
さて、どうしよう…。
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人っ子一人いないガランとした教室。
黄昏の闇に沈む廊下を歩けば
上履きの音が嫌な程響く。
放課後の部活動が終わる時間は
生徒の数が極端に少ない。
たったそれだけの違いだというのに。
学校という建物はいつもとは180°違う顔を見せ、
人を拒絶するような空気を醸し出す。
「…異様な空間」
ポツリと呟く声すらこの空間は逃がさず響かせる。
こういう奴なんて言うんだっけ。
大したこと言ってないのにわざわざ誇張する奴。
流石そんな奴らを収容している建物なだけあるよ。
そっくり。
脳内で毒づきつつ、下駄箱からローファーを取りだそうとすると、ローファー以外の何かに手が触れた。
疑問に思い下駄箱を覗くと、ローファーの上に折りたたまれた紙が乗っている。
さてさて、悪意あるものか、他愛もないイタズラか。この紙はどちらだろうか。
手に取ってみると、四つ折りにされたそれはルーズリーフのようだ。ご丁寧に四隅がキッチリと揃っている。
カサカサと音が立つルーズリーフを開くと、角張った几帳面な字が淡々と並んでいた。
【明日いつもの屋上で】
字は人を表すと言うが、この手紙を書いた人物もそれにもれず、几帳面で真面目な性格なのだろう。
面と向かって言うことはしてやらないけど。
いつもの屋上ね。
本当は今日だって屋上に行きたかった。
あそこは私の楽園なのだから。
生徒会の会議さえなければ行ってた。
この手紙を寄越した人物は、今日も屋上にいたのだろうか。
私が細工したあの扉を抜けて。
一人冷めた目で青春を棒に振っていたのかもしれない。
「明日ね」
私は手紙を小さくたたむと生徒手帳の間に挟んだ。
10/12/2023, 11:44:38 AM