『月夜』
今日も残業で深夜の帰宅。ふと、月夜に照らされた
庭の赤い花に目がとまる。そう言えば昔、赤い花を
食べると何かが起こると聞いた事がある。
この花は食べられるのだろうか‥。
「ちょっと、聞いて!」
翌日、近所のトキさんに呼びとめられた。
「昨日の夜中、あなたの家の前に変な人が居て
ツバキを食べてたんだって!」
もしかして私?‥と思ったが余りの剣幕に
言い出せずにいた。本当は花の匂いを嗅いでいた
だけなんだけれど。
それから瞬く間に赤い花を食べる女の噂が広がっ
た。やがてその噂は、目が合うと花を渡され
拒むと怒り狂った女が花をバリバリと食らう
に変わり、いつしか皆その女を「花喰い女」と
呼ぶようになった。
3/8/2024, 7:16:42 AM