回顧録

Open App

彼と俺は正反対らしい。自覚はないけれども。
繊細な彼、ガサツな俺。
インドアな彼、アウトドアな俺。
人見知りでシャイな彼、物怖じせずに誰とでも話せる俺。
泣かない彼と泣き虫な俺。

今はもうお互い大分と涙腺が緩くなって、ベタに家族とかスポーツのドキュメントとかで感動してしまうけど。

「二人って泣く場所も真逆やん!おもろ」

人にそう言われたことがある。確かに、言われてみれば。
単純に琴線が彼と俺は違うということもあるのだと思う。
俺が泣いた時、そんなぶっさいくな顔で泣かれたら、泣くに泣けないと呆れながら慰めてくれていたことを思い出す。
あの頃の俺は自分のことしか見えてなくて、
辛いしんどい苦しいとよく泣いていた。
そんな俺を受け止めてくれていた彼が俺にはお兄さんのように見えていた。今では俺もすっかり可愛げのない同い年のおっさんになってしまったが。
それはつまりあの頃の彼だって同じように泣きたかったことがあったということだ。俺ほど泣き虫で腐ってはいなかったと思うが。彼にだって零したかった弱音があったはずなのだ。俺が泣いていたせいでそれを飲み込むしかなかったが。

だから罪滅ぼしという訳でもないが俺が泣いてしまった分、彼にはいっぱい泣いてほしい。
『ええかっこしい』だから素直に泣いてくれないだろうけど泣くに泣けない状況にはならないと思うので、俺はもう

『泣かないよ』


作者の自我コーナー
またもやモデルがいる話。
多分これからもですが連動してます。
時々出てくる方言の匂わせは多目に見てください。
正反対でお互いの背中を預けていても、進む方向は同じ二人が好きです。

3/17/2024, 6:08:24 PM