とある恋人たちの日常。

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 彼女と人気のイルミネーションを見に行ったあと、人混みから逃げるように海の見える公園へ向かった。
 そこには都市の有志で飾られた小さなイルミネーションと、それを見るための椅子が用意されている。
 
「ここにもイルミネーションがあるんですねー」
「俺も知らなかったー」
 
 彼女の手を取り、椅子に座る。吐く息も白く寒いから彼女の肩を抱き寄せた。彼女も寒いと言わんばかりに俺の腰に両腕を回す。
 
 正直、人混みに疲れたのと暑かったから、少し頭も冷やしたくて海に来た。本当にそんな軽い気持ちだったんだ。
 
 規模は小さいイルミネーションで、当然迫力も段違いだけれど、公表されている場所じゃないから人も少なくて落ち着く。
 
「寒いけど……落ち着きますね」
 
 俺も寒いには寒いけれど、彼女の体温が心地よくてたまらない。
 
「そうだね」
 
 さっきまでの喧騒とは違って、繰り返される波の音と彼女の体温が心を落ち着かせる。
 
「寒いけれど君が暖かいから落ち着く」
「私もです」
 
 そう言いながら、彼女は俺の胸にすり寄る姿が愛らしい。
 
「もう少し寒くなったら雪降るかなー」
「クリスマスくらいに降ったらいいですね」
 
 すると彼女は身体を話して目線を俺に合わせる。そして満面の笑みで話しかけてきた。
 
「雪が降ったら、また来ましょ。今度は暖かい飲み物も持ってきて!」
「ここに来るまで大変そうだけれどね」
 
 ふたりで笑い合うと、どちらからともなくもう一度肩を寄せあった。
 
 雪が降ったら、また来よう。風邪をひかないように寒さ対策をしっかりしてね。
 
 
 
おわり
 
 
 
二一三、雪を待つ

12/15/2024, 1:20:06 PM