中間子

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#3 「愛言葉」

「では、ばいっ!」

これは私と1つ上の先輩との「愛言葉」だ。どちらかと言うと「合言葉」の要素が強い。
私と先輩は小学生の時、放課後に学童保育に通っていた。先輩は年下の私を非常に可愛がってくれた。小学生の頃の話なので特段先輩後輩といった上下関係はないが、いつも対等に話してくれていた。大好きな先輩だ。
基本的に先輩の親の方が私の親よりもお迎えが早かったので、いつも私が玄関までついて行って先輩を見送っていた。別れ際、私たちにはお決まりの挨拶があった。敬礼をするように右手を額の端に持ってきて、「では」と先輩が言う。その後2人で声を揃えて「ばいっ!」と言う。「じゃあね」とか「バイバイ」よりずっと明るく別れられるし、他にこの挨拶をする人もいなかったのでどこか優越感に浸ることが出来た。
先輩の小学校の卒業式の日、式が終わったあとに先輩とおしゃべりをした。別れ際、またいつもの流れで「では、ばいっ!」の挨拶をしようとした。中学校に上がれば先輩はもう学童保育には来なくなる。お決まりの挨拶をする日常がなくなるのかと思うと、堰を切ったように涙が溢れた。先輩も私につられて泣いていた。2人して涙でぐしゃぐしゃの顔で、でもとびきりの笑顔で大きな声で挨拶をした。『では、ばいっ!!』

10/26/2024, 4:36:47 PM