「遠い日の記憶」
思い出したくなくなって。
ぎゅっと頭の隅にしまって。
お前の笑顔が滲んでった。
肺の中がぎりぎりした。
みー。
そう俺を呼ぶ声は優しかった。
おいで。
夜空にふたりぽっち、砂浜に寝転がった。
それだけで良かった。
ゆー。
俺は小さく呟いて。
そしたら空っぽにしてた心が熱くて。
涙腺の蛇口を無理やりしめた。
お前の涙が、脳裏にいた。
ゆー。
泣かないでとお前に言った回数だけ。
俺と一緒に泣いてくれ。
世界不適合者の俺たちだって。
泣いたっていいに決まってる。
みー。
そう俺を呼ぶ声が、夏の奥底に。
細くて脆そうなお前の手が。
今でも頬にいるから。
ゆー。
間違いなくお前は俺を大好きだから。
ふわりと浮かんだ宇宙に逃げよ。
嘘つきで泣けない俺たちだって。
居場所を作っていいに決まってる。
みー。
ゆー。
それだけでなんとなくわかるから。
えすおーえすはいらないから。
いつでも一緒になけるから。
いつでも一緒にしねるから。
そんなこと言ってたのに。
ふたりぽっちまいなすいち。
心臓の隅に乾いた涙がひりついてるから。
もー、いきたくないよ。
そっちいかせろよ。
7/18/2024, 9:58:26 AM