海月 時

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「お空が泣いてるね。」
彼女が言った。俺は空を見上げた。

「私ね。もうすぐ死んじゃうんだ。」
突然、彼女から告げられた言葉。彼女は、昔から病弱だった。重い病気だとは知っていた。それでも、死ぬ事はないだろうと思っていた。それなのに、別れは自分が思うより早かった。俺の表情が固まった。彼女が、心配そうにこちらを見る。俺は、慌てて笑顔を作った。
「じゃあ、死ぬまでにたくさん思いで作ろうね。」
彼女は、大きく頷いた。

彼女は、病室で横たわっている。外は、連日の大雨だ。俺は、彼女の手を握り思い出話をたくさん話した。彼女は、ずっと笑顔で聞いていた。しかし、彼女が口を開いた。
「今までありがとう。早くこっちに来たら駄目だよ。」
そして、彼女は息を引き取った。

ここは彼女の葬式会場だ。今日も雨は振り続ける。俺は、傘を持たずに外に出た。彼女に泣き顔を見せないために。こんなに苦しいなら、いっその事死んでしまいたい。しかし、彼女の最後の言葉を思い出す。あぁ。今日も、俺は君の居ない世界で生きていく。この雨が、涙と共に君への思いを流してくれる事を、祈りながら。

5/25/2024, 3:17:46 PM