幼い頃から男子が苦手だった。
いつも何か理由をつけて言葉でいじめてくる男子らが
私に「怯える」という感情の苗を植え付けた。
そんな私には女子の親友が初恋だったかもしれない。
毎日、相談に乗ってくれる彼女が恋しくなった。
しかし、彼女は一人の女性。
親友の彼女は私の苦手なある男子に恋をしていた。
私以外に、親友にもあの男子はからかっていたのに。
何か惹かれるものがあったのだろう。
そう思うしかなかった。
バレンタインの前日。
親友は私にだけ打ち明けた。
「明日、あの人にチョコを渡す」と。
私は深いため息をついた。
でも、「やめておいたほうがいいよ」なんて言えない
だから私は彼女におまじないを教えた。
「寝る前に鏡に向かって次のように唱えるの。
『こっちに恋。
私しかあげられないものをあげるから。
こっちに恋、こっちに恋。愛にきて』
小さい声で誰にも聞かれないように言うのがオキテ。
もし聞かれたら、恋は幸運の愛を持ってこなくて
不幸の毒を差し出してくるよ。気をつけてね」
そのおまじないは私の即興で作った出まかせだった。
でも、翌日の朝。
親友はおまじないは無事にやり遂げたと思うと
自信満々に言った。
そして、私の即興は恋の実まで作り上げてしまった。
二人はさくらんぼになった。
私はひとりぼっちになってしまった。
そう思っていた。
親友は彼氏を連れて私に言いに来た。
「もう、大丈夫だよ。こいつに言ってやったから」
「え?何を?」
親友の彼氏は俯きながら言った。
「今まで悪かった。これからはもう、いじめない」
私は笑顔で親友の彼氏にこう言った。
「ありがとう、これからはよろしくね」
4/26/2025, 6:15:38 AM