喜村

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 すっかり気候は春となった、3月9日。
卒業シーズンの時期である。

 学生生活、いい思い出なんてなかったな、とりあえず義務教育だったから通っていただけで。
 長ったらしいお偉いさんの話を聞きながら、ユウカは、体育館の天井をぼんやりと眺めていた。
 特にいじめられもせず、これといった活躍もなく、赤点とかもなく、可もなく不可もなくといった学生生活だったと振り返ってみる。
 とりあえず、高校には進学する、みんなが進学するので、高校までは出ようと思って。
(でもなぁ……)
 ユウカはため息をつく。
お偉いさんの話が長いからではなく、これからの高校生活を考えると憂鬱になったようだ。
 中学校の生活でこんなにつまらない毎日だったのに、高校に行ったらいきなり青春のきらきらした日々が待っているのだろうか。
 過ぎ去った日々を思い返しても、まだ見ぬ先の日々を考えてみても--ユウカはまたため息をつく。
 せめて恋でもすれば、未来に光が差し込むだろうか、過ぎ去った日々は戻ってこないけれども、高校生になったら少しは楽しく過ごしたいとユウカは思った。



【過ぎ去った日々】
※【お気に入り】などのシリーズの出会う前話

3/9/2023, 12:28:14 PM