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『善悪』

空からキラキラと輝く〈善悪の秤〉が降ってきたのは、よく晴れた月曜日のことだった。

それは手のひらサイズの天秤で、左の皿に「自分の善行」、右の皿に「自分の悪行」が可視化されて載るという。
人々はこぞって自分の価値を確かめた。

ある慈善家が天秤を持つと、左皿には黄金の輝きが山をなしたが、右皿に載った「無自覚な傲慢」という一粒の重りに負け、天秤は無残に右へ傾いた。

一方で、嘘つきの詐欺師が持つと、天秤は水平を保った。
彼が吐いた数千の嘘と、たった一度だけ道端の飢えた犬にパンを分け与えた記憶が、なぜか等価値として釣り合ってしまったのだ。

「この秤はインチキだ!」と人々は憤り、天秤を海へ投げ捨てた。

数ヶ月後、遠く離れた海岸に流れ着いた天秤を、一人の子供が拾い上げた。

子供がそれを手に取った瞬間、両方の皿は跡形もなく消え去り、天秤はただの真っ直ぐな鉄の棒になった。

「ねえ、見て! カッコイイ棒みつけた!」

子供のはしゃいだ声に、天秤は初めて満足そうに鈍く光った。

4/27/2026, 9:12:12 AM