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握りしめられた手は今まで感じたことのない痛みが走っていた。
それでも悪い気はしなかった。
でも、跡がつきそうで、流石に手が離れた。
「大丈夫、俺はどこにも行かないからさ、、、、、、、なくなって。」
そう話しかけてみるが、顔は相変わらず暗いまま。
電気のついた明るい部屋でも、俯いた彼の顔には光など差せそうもない。
俺の顔を覗き込んでまだ泣いてるこいつは、
いまにも何処かに消えてしまいそうだ。
いっそ、「せめて、同じ場所にいけたら」そう何度も呟いている
俺だって、まだいきたくはなかったんだ。
でも、しょうがない。
いつかは来る日だったんだ。
おれが、ちょっと早かっただけで。

「、、、ごめんな。お前には笑っててほしい、、、、
 なんて、ありきたりだしわがままかな?」

もうそろそろいかなくちゃならない。
もともとあんまり感情を行動に出さないほうだから、
とてつもなく離れ難いが、そうもいかない。
「もっとはやく伝えてれば、よかったのに、、、
 俺の馬鹿、、、、なんで、、、」
隣から何か聞こえてくる。
「手紙なんかに書かないで、言葉で伝えてよ、、、
俺が真面目なときのお前に、真面目に返さなかったこと ないだろ、、、、」
世間体とか、そんなの、お前がいればよかったのに、、
そんな言葉が聞こえてくる。
それこそ、今じゃなくてもっとはやく言ってくれよ。
どうせ答えてくれないから、小さく笑いながら歩き出す。
「ほんとごめんな。
 笑えとは言わないから、泣かないでくれ。」
背中を押すつもりで、
力を込めて背中を叩きながら俺は背を向けた。
後ろで振り向くような音がしたけど、気のせいだろう。
気のせいじゃなかったとしても、
もう、振り向いちゃダメだ。
これ以上、未練はいらない。

10/8/2023, 8:19:59 AM