会話の途中で突如訪れる静寂。そんななかでふと、この気持ちが「愛情」なんて綺麗で透明で揺らぎない感情ならどれ程よかったのだろうか、と考えてしまった。
普段行き交う生徒を見ることは有れど、こんなに真近で見たのは久々だ。話をしたのはもっと前だろう。卒業して数年でこんなにも輝きを失ってしまったのか、と彼らと話していると驚きに尽きない。
私も彼らのように輝いていた時は綺麗な「愛情」を抱けていたのだろうか。
そんな、人に話す事でもないようなことが溢れそうになった時、タイミングよく少年が手洗いから戻って来た。
「すいません、今戻りました」
「お、お帰り」
この子といると、なんとなく独白したくなる。一人で布団に包まれた時に自分同士で交わす会話みたいだ、なんて言ったらまた怪訝な表情をするのだろうか。
そんな疑問は喉の奥にしまい、作戦会議に移ることとした。
「愛情」
11/28/2023, 9:53:37 AM