「進捗はどんな感じ?」
「あともう少しかな」
真昼間の静かな部屋で二人向かい合って座る。
僕は目の前に座る彼女をじっと見つめた。
陽に透けた黒髪は色を変えて、君の雰囲気を優しくする。
時々顔を上げて僕に視線を移す君に、
思わず胸がどきりと音を立てる。
そんな僕の様子も知らず、
君は長い睫毛を伏せてキャンバスに鉛筆を走らせた。
古めかしい美術室に充満する油絵具の匂い。
ガヤガヤと聞こえる周りのクラスメイトの声。
薄汚れた黒板に描かれた「似顔絵の練習」。
君の瞳に僕はどう写っているのだろうか。
君の描く僕は一体どんな姿をしているのだろうか。
早く君の描いた絵がみたい。
けれど、この時間がずっと続いて欲しいと願ってしまうのは
僕の我儘なのだろうか。
“終わらせないで”
11/28/2023, 12:14:51 PM