森川俊也

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昔からそうだった。
褒められるとか、成功するとか、そんな良いことがあって嬉しいときとか、幸せなときは晴れだった。
怒られたときや、悲しいときは雨。
悩み事があるときや、辛いときは曇り。
まるで天気が私を表しているようだなんて思うのはただの思い上がりだろうか?
私は思い上がりなんかじゃないと思っていた。
だって、直前の天気がどんなに土砂降りでも、私が喜べば一気に晴れるのだから。
それは私だけじゃなくて、周りの人もだった。
「あの子は特別ね。」
だの、
「神様に愛されているんだ。」
だの、取敢えず私を上に上げるものばかりだった。
だから、私が多少傲慢に育ったのも仕方ないのかもしれない。
触らぬ神に祟りなしとはこのことか、好き好んで私に話しかけてくれる人はいなかった。
それがよくなかった。
傲慢だった私は、誰も自分に話しかけてこない現状を腹立たしく思って、事あるごとに直ぐに癇癪をおこした。
そんなことをすれば余計離れていくなんて、何一つわかっちゃいなかったのだ。
そんな私を変えたのは、親でもなんでもない、ただの道端にいた人だった。
きっとその人はホームレスとかそういった類いなのだと思う。
薄汚れた服に、手入れのされていなさそうな髪。私なら全く関わろうとしない人だ。
私なら、というのは、私が出会ったにしてはおかしいと思うかもしれない。
でも、そうじゃなくて、その人とは画面越しに出会ったからこう言うんだ。
何かの番組の中継中だったかな?
街歩きをしていたときに出会った人に、優しく声をかけ始めた。
今思えば、そういう番組だったんだろうけど、当時の私は意味がわからなくて困惑したものだ。
とにかく、その声をかけたうちの一人が私を変えてくれた人だ。
その人は言った。
「自分はもともとすごい能力があったんですよ。お信じになられないでしょうが、それこそ世界の理屈を凌駕したようなね。だが、その力に甘えた結果がこれですよ。与えられた力をどう使うのが正しかったのか今でも分かりません。」
私のようだと思った。きっと、このままの生活を続けていたら私もこの人と同じようになるのだ。
こうはなりたくない。
私は幼いながらにしてそう思った。幼いから、かもしれないけれど。
その日から私はどんどんと生活を変えていった。
いつの間にか私の周りには人が増え、私は普通の人になっていった。
大人になった今もまだ、あの不思議な力は続いている。
だけれど、その力の正しさが何なのか。答えはまだ出ない。

3/24/2025, 9:07:00 AM