名もない譫言

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__私は苦悩している。

 明日はバレンタインだ。みんな(女子限定)思い思いに、それでいて熱心にチョコ作りに励む。

 私はというと、結構チョコは上手くできた。が、問題はどう渡すかだ。隣のクラスの彼。

 友チョコだと偽るのも心苦しいし、かと言って下手に告白して空回るほど馬鹿じゃない。でもここでしなくてはいつする?卒業式は目の前だ。

 そんな事を思いつつ、弁当箱に詰めたサンドイッチを頬張る。私は至って真剣だ。その証拠に、今日はよく眠れなかった。

__バレンタイン当日。
私は朝早く教室に入った。ただし、隣の教室に。
案の定、彼は机に向かって、勉強している。

 えらいなぁ。これからする事とは真反対に、のんきな事を呟く。ゆっくりと彼の机に歩み寄る。

 「あれ?君って隣のクラスの......」鈴のような声で言葉を放つ彼。いまさら緊張してきて、顔が引きつる。

 「こ、これ!えっと......バレンタインチョコ」ほぼほぼ押し付けるようにチョコの入った袋を渡す。そのまま私は教室を飛び出していた。

ー*ー

 隣のクラスの子に、小さな袋を渡された。中身を開けると、丁寧に銀紙に包まれたチョコがあった。その銀紙の裏には小さな文字で、

___言えない思いはチョコに混ぜて、恥ずかしい気持ちはゴミ箱に捨てて。今、あなたに伝えます。


「I love you」

2/24/2024, 6:44:22 AM