この列車の始発、その終点には天国がある――
そう嘯いたアイツの後を追って、白みだした星空を見上げながら、いつもと違う冷たい空気をかき分け、駅で始発を待った。往復の複の方の電車に乗って、そのまま学校に行くつもりだったので、制服だ。駅員が変な顔をしていた。
やがて、始発が駅に滑り込んでくる。一両の扉が開く。中には誰も居ない。
変な気分で、調子に乗って長椅子に寝転がっても見たが、結局は常識的な範囲に落ち着いた。
揺られて、揺られて、終点のことを考える。
やはり、遠い。学校の駅を通り過ぎてあと七駅は行く。
しかし決定的なのは、この終点は引き潮になる時間帯にしか辿り着けない島だということだ。
線路は海を走り、列車はその上を行く。満潮のときは海底に眠る。改修工事にかかる予算案で廃線の見通しが立ち始めているそんな島。
「次は――。――です」
海を走る列車から見える窓の景色は純粋に綺麗だった。朝焼けが眩しいくらいに海に反射して、これが天国なのかと私に思わせるに足りていた。
停車し、扉が開く。駅員が出てきたので、切符を渡す。
……ここは、駅がない。浅い海にローファーを沈ませながら思った。
走り去る列車の輪郭を太陽がなぞるのを眺めていた。
「来たんだ」
振り返ると、ホラ吹きから友人に昇格した例のアイツが居た。制服だ。同じ思惑なのだろうか。
「まあね」
「……もう、列車は来ないよ」
ネバーランドへようこそ。
【列車に乗って】2024/02/29
なにいってんだ!
2/29/2024, 1:47:01 PM