枝と枝の間の景色の真ん中に、一本の、透明な細い糸が張り詰めている。
細い。
よく目を凝らしてみないと見えないほど、細くて透明で、頼りない糸。
しかし、この糸は、絹糸より強いという。
この糸をよく探して、集めて、ひと束にまとめる。
それが、私の仕事だ。
こんな糸を集めて、何をするのか。
それは末端で糸集めとして働く私には分からない。
ただ、毎年毎月、結構な量の糸が必要とされている、ということだけは、わかる。
ノルマの傾向から。
今日集めたこの糸は、染色係班のredに引き渡す用なのだそうだ。
先輩によれば、ここ二、三年は、染色係班に卸す糸は少なくなってきたのだそうだが、それでも、染色係班に卸す糸はかなり多い。
二番目に多い卸先だ。
ちなみに今年の卸先で一番多いのは、インフラ加工係班らしい。
彼らはこの糸を用いて、ネットワークを構築している、と言われているが、無学な私には、よく分からなかった。
私は、枝と枝の間の空間に張り詰めている糸を、仕事用具で絡めとった。
なかなか長くて助かった。
あと3、4本も見つければ、今日の分は達成できるだろう。
ねばねばと、少し粘性を持った透明の糸の束を抱え直す。
蜘蛛を探さねば。
この糸は、蜘蛛と一緒にあることが多いのだ。
私は、景色に目を凝らしながら、山道を歩く。
蜘蛛と、透明な蜘蛛の糸を探しながら。
6/18/2025, 10:36:52 PM