たやは

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脳裏

「痛っ〜。」

ハンドボールの試合中にもろ頭にボールが当たった。ゴールキーパーだから仕方がないと言えば仕方かない。

ん?俺は誰だ?
あーあ。高校2年ハンドボール部キーパーで副部長だ。間違いない。
でも、俺は大正時代の将校だった。
将校って。厨二病かよ。イヤ。これは前世の記憶で、確かに俺は陸軍将校だった。
あー、頭痛てなぁ。
さっきボールが当たった時に全てを思い出した。本当の俺を取り戻した。

あの時、俺は陸軍の研究所で生物化学兵器の実験をしていた。今でも物理や化学は得意だ。
あと少しで生物化学兵器が完成するという時に、上層部から待ったがかかった。軍の穏健派なんて呼ばれている奴らが、生物化学兵器は人の倫理に反するとかいちゃもんをつけて来て、俺は投獄された。

俺は獄中で死んだんだっけ?
なんで投獄されなければならないのか。俺はお国のために、戦争に勝つため兵器の開発を行っただけなのに。

今の時代は平和ボケしているし、戦争なんて遠い国話しだ。けど、俺の今はこの世界だ。前世の記憶があるからと言っても何のメリットもないか。

「おーい。キーパー。大丈夫か〜。」

大丈夫ではない。頭痛ていわ!

ふと脳裏に浮かんだのは女の人。懐かしい人だった。将校だった俺が、ただ1人愛した人だ。俺たちは婚約していた。1年後に結婚する約束もしていたが、俺が投獄されたため婚約は破棄されたはずた。
俺が前世を思い出したように、あの人もこの世界に生まれ変わっているかもしれない。前世持ちかもしれない。

いつか会いたい。
会えるだろうか。俺があの人の面影を覚えていれば会える日がくるかもしれない。

そうか。あの人に会うために俺は前世の記憶を取り戻したのだ。探しに行こう。
あの人に会うために。

11/10/2024, 1:19:47 AM