名無夏

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ずっと好きな人がいた。
幼稚園から一緒で、家も近かったからよく遊んでいた。それは高校生になっても変わらず、暇さえあれば通話を繋いでひたすらゲームをしていた。
楽しかった。時間を浪費していると分かっていても。この幸せがずっと続くんだなって、思っていた。

「お前に紹介したい奴がいる」
呼び出され、突然言われた言葉。隣には可愛らしい女の子。
「俺の彼女。四葉」
彼女は恥ずかしそうに頭を下げた。
私とは違って女の子らしく、口調も丁寧だ。声も仕草もふわふわしていて、いるだけで場が和むような。
彼女の隣を見れば、今までにないくらい穏やかに、優しく微笑みかける貴方。
私にはそんな顔、しなかったくせに。
私は"お前"で、彼女は"四葉"。
私の方が、いっぱい彼を知っているのに。
私の方が、ずっと長くいるのに。
私の方が、ずっと好きなのに。
"三葉"の私じゃ、幸せになれないの…?

たぶん、こういうところ。
すぐに嫉妬して、勝手に不機嫌になって、他人にぶつける。こんな妬み嫉みに溢れた私より、純粋無垢な彼女の方が貴方に似合ってる。

あんたらの幸せなんか願ってやらない。
ぶち壊してやりたいほど憎いけど、

「お幸せに。」

3/31/2024, 4:42:09 PM