霜月 朔(創作)

Open App

隠された手紙



古びた机の引き出しに、
黄ばんだ封筒が一つ。

滲むインクで書かれた言葉。
「話をしたい。」
まるで昨日のことのように、
その声が脳裏をよぎる。

忘れた筈の罪、消えぬ影。
崩れ落ちた未来。
封じ込めた声が、
夜の隙間から滲み出す。

握り締める拳に、
爪が食い込む。
捨ててしまえば、
楽になれるのか。
…だが、出来はしない。

隠された手紙。
それは、過去の闇からの刃。
朽ちる事のない鋭い痛み。

震える手で封を戻し、
静かに引き出しを閉じる。
二度と開かぬように。

…それでも、
耳元で囁く声は、
消えてはくれなかった。

2/3/2025, 9:26:57 AM