もんぷ

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ラララ

「え、つまり…教師はカラオケに行くな…ってことですか。」
「いや、そういう訳じゃなくて…佐藤先生がカラオケ行ったの見たって騒いでた児童がいたから、ほら、もし親御さんにまで話が行ったら面倒じゃない。だから次からは気をつけてねってことで…」

 彩りの綺麗な給食を食べながら、さっき教頭に言われた言葉を思い返す。次からは気をつけてって言われても…芸能人みたく変装して行けってこと?いやいや、教職として不適切であろう夜の施設に入ることならその注意も理解できるが、カラオケでさえそんなことをしなければならないのか。高校から仲の良い五人でごはんを食べた後にカラオケ。いや行くだろ、普通だろ、何がダメなんだよ。悶々としながらスプーンで白ごはんを掬う。
 はぁ、教師ってこんなに制限の多い職業だったっけ。学校にいる間は教師という生徒から見て隙のない完璧な人間を演じるのは当たり前だが、外に出たら好きにさせてくれ。前奏も後奏もカットして、歌詞の最後に続くラララを歌うのをやめてしまう今の子どもたちにカラオケの良さなんてわかるのか?ふぅと息を吐いて食事を終える合図として手を合わせた。
 窓の外から優雅に鳴く鳥の声がうっすらと聞こえる。生まれ変わったら鳥になりたい。どこまでも高く飛んで、宇宙まで行きたい。しーんとした宇宙で、どこまでもらららと終わらない歌を歌って、声を枯らして浮いていたい。

3/8/2025, 9:59:40 AM