お前は参加しないのか?
いつも以上に騒がしい酒場の一人席。
隣に座った男から声が掛かる。
頬に走る痛々しい傷痕。彼との付き合いも、もう長い。
いやだなぁ。あんな眩しいもの見せられちゃ、
余計細目になっちゃうよ。
逸らせようと下を向いたって、グラスに反射し、傷だらけの手の甲を照らす光が嫌でも目に入るだけ。
つぶってしまえば簡単に逃げていられる。小さな汚れも、大きな傷も。
それなのに。
逃げたくても、諦めたくても、
いつも閉じることができないまま背けつづけた。
綺麗な音。綺麗な匂い。綺麗な手触り。綺麗な音。
それだけあればきっと。
きっと見なくたって生きていける
『形の無いもの』
9/24/2023, 11:55:49 AM