烏羽美空朗

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雨の音だけが聞こえてくる青い夜。本や書きかけの原稿用紙が散在するその部屋の端っこで膝を抱えて蹲っている彼を、私は何もできずに見つめていた。

彼は何か辛いことを思い出したりすると、いつもわざと明かりをつけないで一人で泣いている。正直最初は驚いたし、何より怖かったのですぐに明かりをつけていたが、泣き顔を見られたくないのでは、と気づいてからは、彼が満足するまで暗くしていることにしたのだ。

……しかし、彼は泣いている理由を一度も話してくれたことがない。それどころか泣いていることを知られたくないのか、泣き声やすすり泣きの音さえも出さない。ただひたすらに瞳から雫を落とし続けている。

私がそこにいても、彼は一人で泣いている。それを見るのは、とても辛い。

泣きたいときは泣けばいい。
それでも、言ってしまいそうになる。

泣かないで

11/30/2022, 12:46:11 PM