「名前は?」
「朝久だよ、よろしく。」
「奏斗、よろしく。」
彼らの年なら、まだ走り回ることが好きなはず。
しかし、彼らはその姿を見るだけ。
決して親に言われているのでは無く、唯々走り回ることが性に合わない。
それだけ、しかし、大きい共通点を持つ二人の少年は意気投合した。
「朝久、」
「申し訳ありません。朝顔の君、どうか、息子のご無礼をお許し下さい。」
話かける前に、父さんは僕の頭を押さえて、父さんも頭を下げた。
「誰しも、人間なら一度は間違うものです。どうか、お気になさらず。
今後、お気を付け下さい。」
先ほどとは全く異なる、大人びた洗練された言葉で彼は応えてた。
「ご寛大な心遣い、感謝申し上げます。それでは、失礼します。」
父さんは、急いでこの場を後にした。
「良いか、あの方は皇族では無いが、皇族の血を引いている御方だ。
我らの家格では尊称は呼ぶことは許されても、名は呼んではならない。」
「すみませんでした、以後気を付けます。」
僕は、素直で良い子を装う。その方が、説教はすぐ終わるからだ。
公の面前とは、色々面倒くさいものだ。
私の家は、所詮格のない羊皮紙の貴人だと言うのに。
朝久と目が合った。
朝久は、急いで僕に駆け寄ってきた。
「さっきのことは、気にしなくていい。普通に朝久って呼んでいいから。」
「僕も、気にせず呼ぼうと思ってた。」
両者ともに見せないが、安堵していた。
互いの聡さと、立ち回ることの出来る賢さに。
子どもの頃を思い出すと、身分とは如何に容易く乗り越えられる、
曖昧なものかと、思い知らされる。
「朝久、久しぶり。」
「久しぶり、奏斗。」
「朝久、またな。」
「またな、奏斗。」
何度、この会話を繰り返した事だろう。
「奏斗、また会おう。これからも。」
私は、勇気を出して始めに言ってみる。
「もちろん。また会おう、朝久。」
奏斗は、嬉しそうに微笑んだ。
11/13/2024, 2:37:11 PM