うぐいす。

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 ―――人生には、きみの将来を左右する選択肢が存在している。

 朝。
 最近、幼馴染の様子がおかしい。
 同じ部活に入っている先輩とデートをしているところを目撃されてから、挙動が妙だ。
「なあ、今日一緒に帰らないか?」
 放課後。
 校門前で立っている幼馴染にそう聞かれる。一緒に帰っているところを誰かに見られたら、恥ずかしいだろ、と前までは言っていたのに、一体どういうつもりなのだろう。
 一先ず、心の中で選択肢を上げてみる。

 一緒に帰る。
 一緒に帰らない。

 取り敢えずは、この二択だろうけど・・・、以前までは、一緒に帰るなんて以ての他と言っていたのは彼の方だし、最近の彼に違和感を感じるのも事実だ。ここは、暫く様子を見るという意味でも、そっとしておくのがいいだろう。
「ごめんなさい。一緒に帰って友達に噂されるのも恥ずかしいし」
 そう返すと、幼馴染は悲しそうに眉を下げて帰って行ってしまった。ちょっと可哀想なことをしてしまっただろうか。

 次の日の放課後。
「なあ、今日一緒に帰らないか?」
 昨日と変わらず、一言一句同じ台詞を吐く幼馴染。
 諦めないなぁと思いつつ、恒例のように選択肢を二つ考える。

 一緒に帰る。
 一緒に帰らない。

 しかしこれは、考えるまでもないだろう。
「ごめんなさい。一緒に帰って友達に噂されるのも恥ずかしいし」
 幼馴染は悲しそうな表情をして帰って行った。二回目ともなると、心が痛んでくる。

 また次の日の放課後。
「なあ、今日一緒に帰らないか?」
 ・・・三回連続でこう来るとなると、逆に関心するものがある。
 ここまでくれば、選択肢を考えるのも不毛というものだ―――

 一緒に帰る。
 一緒に帰る。
 一緒に帰る。
 一緒に帰る。

 ―――?
「うん、一緒に帰ろう」
 不思議と口が勝手に動く。
 まるで、誰かに操作されているみたいに。
「ああ! 帰ろう!」
 幼馴染は、私の言葉にうれしそうに声を上げた。
 まるで願い事が叶ったときみたいに、満面の笑みを携えて。

 ―――入生、には、キみの将來を佐右すル選択死、が存在死てイる。

6/8/2024, 11:46:47 AM