時雨

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100年先も
シワシワの暖かい手の温もりを隣で感じる。
病室に横たわる君は先にお迎えがきたようだ。
私は微笑みながら温もりが消えいくその時まで手をにぎり言葉を紡ぐ。


「あなた、、あの時のやくそく覚えているかしら。」
今の君は私の言葉を聞いているか分からない。
だけど伝えたくてその一心で語りかける。
「約束、、、、、叶えてくれてありがとう。」


私達は青い果実。
君の姿を日々、目で追いながら想いを育むワタシと。
君のふとした時の儚さや笑顔の奥にある芯の強さに心惹かれながらも初めての感情に戸惑うボク。


想いを馳せる先に見えた応えは貴方が背負うには重すぎてないかとても心配だった。


だからこそ私達は約束を交わした。


「100年先も、、、一緒に歩めるように、、、」と


心電図に写る線が穏やかになっていく。
私の手を握る力も緩んでいく。
君の目が幸せそうに細く永くなっていく。


一緒に100歳まで生きようと約束したあの日。
君の歳は惜しくも98歳で止まってしまったが、君と過ごした日々は年以上に価値があるものだ。


ふと、君が一瞬私の手を握る。
私も強く、強く、握り返し言葉を贈る。
「ありがとう。私はもう大丈夫ですよ。」


君が笑った気がした。
心電図に静寂が流れる。


私はもう一度、、、

「ありがとう。」と呟き

病室を後にした。





2/3/2026, 12:50:15 PM