案山子のあぶく

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◎君と見た虹
#51


『新月の夜に虹が見えることがあるんだ』

唐突にそんな話を切り出してきた隣人の言葉を、嘘だね。と一蹴したことがあった。

「満月のときじゃないと。それに稀にしか見えないよ」

新月のときになんて無理がある。

『本当なんだけどな』

悲しそうに笑っていたのを今でも覚えている。

『いつか、君にも見せたいよ』

その言葉がずっと記憶の片隅で繰り返されている。

七色の橋が綺羅綺羅と輝く星々の輝きを受けて空に架かる、というのは無理があるだろう。

でも隣人の表情が嘘を言っているようには見えなくて、今でも新月の夜は空を見上げて探している。

隣人だけが知る月虹はどんなものだろう。

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「虹の下には宝物が埋まってるんだって」
「違うよ、死体が埋まってるんだよ」
「宝物だよ!」
「死体だよ!」
「じゃあ、確かめてやろう」
「そうしよう」

「「本当に虹の下に着いちゃった……」」

さて、何が埋まってるのでしょうか。
そもそも、虹は蜃気楼のようなもの。
追いつけた"それ"は本当に虹なのでしょうか。

2/22/2025, 2:28:36 PM