鳥居の周りは、明るく人で賑わっている。
丘の上の狐は耳を立て、首をピンと伸ばしその光景を眺めていた。
それは毎年夏が訪れると、催されるものである。
ゆらゆら揺れる提灯に、小気味いい囃子の音。色とりどりの屋台と、景気の良い話し声。
人間たちは、各々、自分とは違う誰かの面を頭に引っ掛け、やや動きにくそうで涼やかな衣服を身に纏っている。
何かの匂いが鼻をくすぐる。肉の焦げたような、胃袋を刺激するような匂いは、普段の狐が口にすることのない匂いだ。
きっと、あれだ。母親に手を引かれた小さい子供が、焦げ目のついたとうもろこしにかぶりついていた。
もう少しだけ、近づいてみようか。そう考えるも足の動かない日々が続いている。
いつか行ってみたいと思う。それにはもう少し上手く、この尻尾を上手く隠さなきゃならないんだけど。
7/8/2024, 10:25:14 PM