これってまさか以心伝心?
戸惑いながらチョコの包み紙を開けて、何も動じてないフリをしてパクッと一口。砂糖と植物油脂の約束された甘さがとろり。
ついさっきまで私が食べたいと思っていたメルティキス。私は何も言っていないのに。
「なんで」
一箱に数個しか入っていない高級品だけど、美味しくてつい手が伸びてしまう。私の机に箱を置く方が悪いのだ。
「うん?」
「何でわかったの? 私がこれを食べたいってこと」
「んふん」
「んふんって何、んふんて」
カナトも箱に手を入れてチョコを取り出す。
「分かりやすいからなあ、ミウは」
「私が?」
「まじちょろい」
「ちょろいとか言うなっ」
カナトはチョコを口に放った。
「んめ」
「ふふふ」
放課後の教室。私たち二人だけ。
それぞれ口を閉じて、メルティキスを味わう。今この瞬間に、彼と同じチョコを味わっている。その感覚が、なんだかちょっとくすぐったい。
カーテンに冬の西日が当たり、温かなオレンジ色に染まっている。
【お題:心と心】
12/12/2024, 11:43:29 AM